東京パラリンピックのトライアスロン男子銀メダリスト、宇田秀生(ひでき)選手(37)=滋賀県甲賀市出身=が9日、同県東近江市立愛東南小学校で講演した。人権学習で招かれ、全校児童や教職員が聴き入った。
宇田さんは26歳で結婚して5日後、建設会社で仕事中に機械に巻き込まれて右腕を失った。
事故の5日後。すでに前向きな話を妻とした。
「元々サッカーをやってて体を動かすのが好きやし、これからできることあるかな。パラリンピックというのに出るチャンスがあるね」
事故の6日後、初めて病院食を食べて涙が出た。生きててよかったという涙と、食事も何事もずっと(利き手でない)左手でしなくてはいけないという寂しさからの涙だった。
1カ月で退院すると、片腕がないだけで冷たい視線にさらされた。「障害のある人、困っている人に思いやりを持って温かい目でみてほしい」と求めた。
片腕を失う「大ピンチ」から銀メダルをとって、スポーツで復活できた理由は、9割が家族、友達、大勢の人のおかげ。1割が物事を前向きに考える力だとし、「これがないと、もらったパワーを前向きに使えない」。このために、よく笑う▽肩の力を抜き、物事をいい意味で小さくとらえる▽好きなことを持つ、の三つを覚えておいてほしいと語った。
宇田さんは5年前にも同校で講演した。「力をもらい、メダルをとれた」と感謝した。
6年の広瀬優希(ゆの)さんは「5年ぶりに聞いて、夢や目標を達成しているのが格好いいと思った。私もそうしたい」と話した。